スクール・オブ・ロック

★★★★☆

負け犬ロック伝道師の小学校布教活動。 言ってしまえばそれだけだ。 あらすじを聞いただけで、エンディングが想像できてしまう映画だ。 そして、エンディングはほとんど想像した通りだ。 しかし、終着点までの道のりは、ハリウッド型量産コメディという平坦な道ではない。 そして何より、こんな楽しい映画は久しぶりだ。 楽しい事はいいことだ、と久しぶりに実感できる。
この映画は(『も』と言うべきか)ジャック・ブラックでないと成立しない。 彼の出世作『ハイ・フィデリティ』でも彼にしか出来ない役どころ(というより彼そのまま)であったが、今回は二重の意味で多少趣が異なる。 1つは、ハイ・フィデリティよりかなり濃縮されたジャック・ブラックパワーが全開な点。 もう1つは、それでいてジャック・ブラック演じるデューイー・フィンという主人公のキャラクターがしっかり成立している点である。 主人公は猛烈に分かり易い人格の持ち主; 大人になることを拒否するどころか選択肢としても把握していないロックバカである。 ただ、彼の価値観や反応は理解でき、共感出来る。 彼の言う様に、彼も映画の中であっても制作会社に身売りは決してしない。 そのロックバカ道が脈々と生き続けており、映画鑑賞者に媚を売らない。 よくある『サウンドトラック』と称して新人バンドを売り込むようなまねもしない。 バカとして生き、バカとして死んで行く。(いや、映画では死なないよ。) 汚い裸体を振り乱し、誰も受けとってくれないまばらな観客に向かってダイブする。 端から見れば明白な理想と現実のギャップが、彼自身にだけは見えない。 そんな男なのだ。 しかし彼はどっこい生きてる映画の中、なのである。
確かにストーリー展開は強引だし、終盤での話の流れもつかみにくい。 ストーリーは正直ショボい。 しかし、ジャック・ブラックと彼を取り巻く子供たちに、そんなショボさは関係ない。 ロックにストーリーは無いのだ。 Stick it to the Man!
ちなみにジャック・ブラックが映画で着ていたTシャツに

Gettin' Lucky in Kentucky

と書いており心を奪われてしまった。 只今ウェブを徘徊しながら探し中である。 Tシャツにここまで心奪われたのは、オズボーンズでオジーが着ていた"Hippie Killer"Tシャツ以来だ。