家庭で出来るベストお米ブレンディング計画 I

『ナニワスペシャル』
レシオ:庄内はえぬき 80% ミルキークィーン 20%

はえぬきは米の弾力が強くその分食感が楽しい。 そして味のバランスも良い。 山形が売り出し中の米だが、柔らか目の米を好む関東より、しっかりした食感を好む関西向きのお米と言える。 一方ミルキークィーンは、もち米程では無いにしても他のうるち米とは明らかに違う白濁した米粒が特徴的。 甘みと粘りが非常に強い低アミロース米だが、続けて食べるにはくどく感じる。
はえぬきに、さらなる旨みを』がこのブレンドのテーマである。 はえぬきはコシヒカリ等に比べると安く、ミルキークィーンはやや高い。 ミルキークィーンを数割足すことによって、はえぬきに大きな旨みを与えることができる。 好みによってミルキークィーンの比率を調節できるが、あまり高くするとミルキークィーンの粘りによってはえぬき独特の食感も薄くなってしまうので2割程度がお勧めである。
尚、ミルキークィーンの比率を少し変えるだけで米の個性を大きく変えることができるので、料理によって比率を調節したときの効果が高い点も特徴である。
和食の時には見るキークィーンの比率を下げ、洋食・中華の時には逆に比率を上げるのが基本ブレンディング戦略である。 しかし米だけでもうまく、独特の食感が味わえるというのがこの『ナニワスペシャル』最大の特徴である。

ブレンド米と言うと『米屋や商社が余り物を混ぜて売っている安い米』という印象がつきまとう。 確かに、事実ではある。 しかし充分条件ではない。 会社もいろいろ、仕事もいろいろ、人もいろいろ、ブレンド米もいろいろだ。 ブレンド米には基本的に4パターン存在する:

1は、新米出荷時期に米屋が良くする販促テクの1つである。 古米は、時間の経過と共に米の水分が飛んでしまうので甘みが減ってしまう。 それを新米と混ぜることによって、味も新米に匹敵しかつ安い、コストパフォーマンスの高い米になる。 理に適ったブレンディングだが、しかしブレンディングとしてはバランス重視的なブレンディングであろう。 ただ古米をそのまま売っている米屋もほとんど無いので、家庭では実践するのが難しい。
2は、米屋でもこだわりの強い米屋が得意とする、かなりハイテクニックなブレンディングである。 同じコシヒカリといっても、産地によって味は大きく異なる。 そして年度によって産地ごとの出来・不出来も大きく違う。 例えば15年産では長野や魚沼では良出来であったが、富山や福島ではあまり良くなかった。 こういった産地ごとの出来の違いを吸収する為に、ある特定産地米の個性を殺さず他産地米で欠点を補うというのがこのブレンディングである。 当然匙加減は非常に微妙になり、難易度も高い。 家庭向きとは言えない。 そして、ブレンディングとしては守りのブレンディングである。 さらに3種以上のブレンディングもよく行うので、そんな種類の米を家に置くのはちょっと現実的ではない。
3.安売り米、つまりポリシーを持たないブレンディングである。 産地において余り気味の米を叩いて安く仕入れ、混ぜて売る、という商社が良くやる手である。 家庭では真似できないし、真似したくも無いであろう。
そう、私が提案するのは4のパターンである。 そしてこのブレンディングが唯一家庭で実践的に行え、しかも効果が期待できる。 自分に合った、ほんとにうまいと思える米を、自分の手で作り出す。 これは攻めのブレンディングだ。
そもそもうまい米とはどんな米か? 究極的に言うと、自分によりあった米を人はうまいと感じる。 確かに、米の持つ甘みやねばり等は数値により比較できるが、実際人によってどの米をうまいと感じるかという結果との結びつきはさほど強くない。 それでは高い米はうまい米か? そうではない。 確かに総合評価の高い米は値段も高い場合が多いが、米の値段は基本的には流通量の少なさと、生産時におけるプラスアルファの手間が大きな要因である。 米は7年前まで国が生産量管理を行っていたという歴史的背景より、生産量の低さと値段の高さの関係はよりはっきりしている。 うまい米を探すのに王道は無いと言われている。 他人の推薦も、こと米の味に関して言うとあまりあてにできない。 色々自分で試してみるのが最も良い方法であろう。
さらに、毎日ハンバーグを食べる訳にも、毎日カレーを食べる訳にも、毎日煮物しか食べない訳にもいかない。 それでいて、米は料理との相性に非常に敏感である。 ササニシキは確かにうまいが、その繊細な甘さ故に日本料理との相性は良くても焼肉と一緒に食べるとその良さは吹っ飛んでしまう。 ミルキークィーンも相性が合えば他の米だと物足りなく感じてしまうが、カレーライスにすると流石にしつこい。 しかし、米は大抵2kgや5kgで売られている為、料理に合わせて何種類も家に備蓄するのは現実的ではない。 米屋の現在の米屋としての存在意義は、その家庭の食生活(家族構成、料理の頻度、出身、その他)にとって最も平均点の高い米を提案することである。
では、さらに一歩踏み込んで、料理に合わせて自分でブレンドしたり、自分が最も好む『マイブレンド』で食べるのはどうだろう?というのがこの『家庭で出来るベストお米ブレンディング計画』のテーマである。 2品種限定、家で出来る、そして効果を実感できるブレンディングのアイデアを提供できればと思っている。 そんなに頻繁には出来ないが、何かアイデアが浮かんだら自分で試した後、お勧めしていこう。