アメリカ兵はブッシュ支持か?

id:dot:20040706 経由 id:TomoMachi:20040625
華氏911の話題から、少しアメリカ軍の兵隊についてのコメント。
アメリカ人は好戦的だ、愛国主義的だ、そして戦争好き自分の国好きのナルシストだから志願兵が多い。 といった感じのコメントを以前どこかで見たことがある。 そう、最初の2つは正しいと思う。 ただ、最後の志願兵についてはどうか。 軍人に関してはちょっと考察が必要だ。
アメリカとは言え、他国の軍隊と組織構造はあまり変わらない。 士官学校、大学の軍隊科学(と言うのかな? Military Scienceのこと。)等を卒業し、士官として自らのキャリアをスタートさせたエリート組と、その士官に指揮される志願兵である。 アメリカだからと言って、二等兵から提督クラスへのアメリカンドリーム、というのはまずない。 士官は、個人的感情を考慮しなければ、彼らは他のキャリア組と何ら変わらない、キャリア人間である。 そして志願して入隊するものの多くは、家庭の事情等の為に大学進学できない、もしくはしようとしている一般アメリカ人である。 彼らにとって、果たして軍隊入隊への動機とは何だろうか?
軍人の人口比率を研究したことはないが、全軍人人口の大きな割合を占めるのが山岳部・中西部・南部出身の白人系アメリカ人であると思われる。 私が住んでいたユタは山岳地帯にあたり、特にモルモン教の聖地という土壌から白人比率が非常に高かった。 サウスパークと、そしてマイケル・ムーアの故郷であるフリントと環境は非常に近い。 大学にもMilitary Scienceはあった。 キャンパスメールで1年程バイトしていたが、20人いた作業員のうち4人は元軍人であり、そのうちの1人は海兵隊員だった。 技術系の短大は、まぁ短大といっても専門学校のような職業訓練所のような感じのところだったので、クラスの半分は軍隊経験者、1/3は現役予備軍兵だった。 講師の1人が予備軍の上官で生徒が部下、そして授業中に軍隊内での話をされることに生徒が訴え出る、という事件まであった。(作り話ではない) そう、ソルトレイクにおいて軍隊、特に予備軍の存在は非常に身近な存在であり、ソルトレイクに限らず前述の地域において似たような都市は多くある。
そういう環境で生活して思ったこと、それは『入隊が唯一の選択肢』というケースが多いことである。 友人の1人に、18歳で高校を卒業して直ぐ何も考えずに入隊したという男がいた。 彼が言うには、『家にはうんざりしていた。 ユタ南部のあんな田舎だと、家を出る方法は軍隊しかない。』ということだった。 別に突飛な話ではなく良く聞く話でもある。 他の友人は、大学でドイツ語を勉強したかったがどうしてもお金が無かったので軍隊から奨学金をもらうことにし、予備軍に入隊したと聞いた。 これも非常に良く聞いた話だ。 彼らの多くは政府に対しては悲観的だが愛国心が普通よりちょっと強く、保守的な人間が多い。 そして、彼らの多くは共和党支持者である。 軍隊に入隊したことを後悔している人はほとんどいないが、軍隊、政府に対しての批判には直接的かつ熱心でもある。
マイケル・ムーアのドキュメンタリーには、あまり『痛烈』という印象は持っていない。 ただ、非常に『直接的』ではある。 ボウリング・フォー・コロンバインを見ても、内容に驚きは無いが、その手法の直接さには驚いた。 とにかくストレートなのである。 あれがアメリカの真の姿と言うのは正しくない。 ただ、ある一部の人間にとってあの世界は紛れもない事実である。
1つ、アメリカ軍の兵隊が、皆『お国万歳・アメリカ万歳』な人間ばかりではない、というよりそういった人間は少数派だという事は是非頭の片隅に置いていて欲しい。 そして、ブッシュの支持率が高かった時も、それは彼の手腕を妄信していたからではない。 アメリカはさほど狂信的ではないし、それほど怖い国という訳ではない。 マイケル・ムーアの映画が公開されることに対して圧力をかけた政府の行為は、大きな非難の的となっており、アメリカ人はその自己批判精神を誇りにしている人達だからこそ華氏911が創られたのである。 マイケル・ムーアももちろん普通よりちょっと強い程度の愛国者である。 そして、今いるアメリカ兵も、普通よりちょっと強い程度の愛国者なのである。