おとぼけハリケーン

http://www.economist.com/world/na/displayStory.cfm?story_id=2771440
ビル・クリントン。 ずっとクリントンファンだ。 最初から好きだった。 今も彼の動向はチェックしているし、テレビで見かけるとちょっぴり幸せな気分になる。 彼は私の四つ葉のクローバーだ。
彼は今忙しい。
"My Life" ISBN:0375414576
本のキャンペーンに奔走しているようだ。 この『おとぼけハリケーン』の襲来に、LAは色めき立ち、DCは右往左往する。 クリントンのブックキャンペーンが持つ来る選挙への影響を民主党は計りかねている。 そして、今までの、我らがビリーへの仕打ちを後悔しているのではないか?
アル・ゴアは、小ブッシュとの選挙戦において突然クリントン離れ戦略に打って出た。 そして民主党もゴアの姿勢をサポートしクリントンと明確な距離を置いた。 口の悪い政治ジャーナリストは『去勢されたクリントン路線で行けば軽く勝てたのに』と揶揄したが、あながち外れとも言い難い。 ゴアは南で勝てなかった。 兄貴クリントンの出身であるアーカンソーでさえブッシュに大差で敗れた。 結果があの全米中を混乱の渦に巻き込んだリカウント騒ぎの末の敗退だ。 そんなゴアも、民主党も、ビリーは責めない。 彼はあくまでハリケーンであり、ハリケーンの目はそよ風が吹く静かな場所だ。 ヒラリーのNY上院議員出馬が決まってから、ビリーにとってそよ風はさらに心地良いものになっただろう。 彼女の勝利を一番喜んだのは、色んな意味でクリントンだった事は確かだ。 彼は今、というよりここ3年、呪縛から解かれたかのように生き生きと活動し、強大な人気をアットランダムなスタイルで発散していた。
この記事の要旨はずばり、『ジョン・ケリークリントン人気に肖ればいいのでは?』である。 彼はゴアではない。 よって以前の仕打ちを気にする必要が無い。 そして、この誠実かつ堅固な民主党候補からの助力の要請を断りはしないだろう。 そう、おとぼけハリケーン唯一の指針は、その中心たるクリントンが欲する絶大なエゴに他ならない。 ジョン・ケリーからの和平条約の打診は、そのエゴを満たすに充分だろう。 電話一本で、次のキャンペーン地ではビリーがサックス片手に軽やかなステップで登場するであろう。
アメリカ人は、スキャンダルと経済成長に沸いたクリントン時代を懐かしく思っているのではないだろうか。 少なくとも私はそうだし、知人にもそういう者は多い。 ケリーに欠けているもの、それは魅力の無い副大統領候補ではない。 ビル・クリントンその人だ。