ブッシュ、思わぬ伏兵に苦戦。

http://www.nytimes.com/2003/12/25/politics/25ENVI.html?hp
要約:

A federal appeals court on Wednesday at least temporarily blocked a Bush administration rule, due to take effect on Friday, that would have relaxed existing regulations and so allowed hundreds of aging power and industrial plants to make upgrades without installing modern pollution controls.

つまり、議会を通して環境保護法を改定し、規制を甘くするということができなくなった。 環境保護団体から見れば大きな収穫だろう。
これによって経済的に損をするのは誰か? 石油精製所、鉄工所、その他重化学産業だ。 90年代以降環境保護法の強化等で運営コストが増大し、新規機械投入も公害軽減装置等のコストに吸い上げられ思うように進んでいない。 このままではアメリカの重化学産業は壊滅してしまう。 それは、自然の流れだろう。 弱い産業とは廃れていくものだ。 それを保護しようとしても、結局は時流に逆行するだけであり、効果は少ない。
ただ環境保護問題とは、公害を減らせばいいという単純な問題ではない。 例えば、もしブッシュの規制緩和という思惑が適わなかったとしよう。 アメリカの重化学産業はさらに競争力を削がれ、アメリカの輸入依存率は高まる。 アメリカ一国のみを議論しているうちはそれでいい。 しかしそれだけ発展国での重化学化が進み、そこでの公害はさらに深刻な問題となる。 結局、鉄はいるし石油も使う。 この絶対量がどうにもならない限り、公害問題への対策とはただ場所を移すだけの事となりかねない。
先進国は環境保護問題に対して積極的だ。 先進国は、環境問題に優先度をシフトさせれるだけ豊かなのだろう。 しかし、京都条約に限らないが、この手のグローバルレベルでの環境規制に発展国は協力的ではない。 彼らはまさに発展の途上にあり、発展のエネルギーが経済力拡大以外に吸収されることは好ましくないことだからだ。 しかし今の先進国が工業化を推進していた当時は、自分たちは環境問題を軽視してきた。 『我々は失敗をして学んだのだから、あなたがたに同じ失敗をさせる訳にはいかない』といった類の先進国から発展国に対する環境圧力には、少々閉口してしまう。
ブッシュは違う。 彼は先進国のリーダーでありながら、自分の政治基盤への配慮等の為に環境問題を軽視している。 これは賞賛すべき態度ではない。 しかし、今回のブッシュ政権と裁判所とのやり取りは、別の意味で考えるところが無いだろうか? はたして、先進国の中で環境保護を訴えることが、どれ程世界的に見て効果のあることなのだろうか。 それは、ただ公害源を先進国から発展国に移すだけなのではないだろうか。 私がそう思っている訳ではない。 しかし、環境保護を訴える人間は、そういった事も充分配慮にいれて、より世界的に達成度の高い解決策を模索すべきだろう。 残念ながら、今の環境保護対策は、先進国主導なのは仕方ないとしても、先進国主眼的な構想が強いように思う。 これでは先進国の独りよがりと発展国から見られ、軽視されることになりかねない。 これは一国がどうこうできる問題ではないのだ。 より深い考察を期待したい。