ブッシュの犯した罪

ケネス・ロスの論文より
http://www.foreignaffairs.org/20040101facomment83101/kenneth-roth/the-law-of-war-in-the-war-on-terror.html
要約はこうだ:

The Bush administration has literalized its "war" on terrorism, dissolving the legal boundaries between what a government can do in peacetime and what's allowed in war. This move may have made it easier for Washington to detain or kill suspects, but it has also threatened basic due process rights, thereby endangering us all.

この手の警鐘は、戦争があれば必ず起こる。 しかし、今回は違う。 ロス氏の懸念はまったく遠い絵空事ではない。 民主主義国家が堕ちるときとは、こういう時である。 政治学に通じた人間で国政に直接参加している者は、大多数は現実主義者(リアリスト)だ。 軍部を見れば特にそうだ。 リアリストは、間違いを犯すことを避けていると思って自ら過ちを犯すことが多い。 リアリスト的アナリシスの欠点はこうだ:

  • 『他国の政治指導者も、国家の存続を第一と考え、論理的に行動するものだ』という共通認識を過信しすぎる傾向がある。
  • 目前の状況を分析するには長けているが、将来への動向や移り変わりを軽視する傾向がある。
  • 一般に平和論に対して悲観的であり、他思想から見れば好戦的と言える。

私は、かなりリアリスト的な見解が多い。 私はミアシャイマー程では無いが、国際情勢をパワーポリティックスとする見方が強いように思う。 今回の警鐘は、ブッシュの政治手腕うんぬんを論じているのではない。 彼は、失敗が多く、近視眼的な大統領と言えるが、特別悪いたぐいのものではないであろうと思っている。 彼には父の遺産があり、軍務経験者が多いことから言っても彼の側近にはリアリストが多い。 そして、リアリスト的アナリシスが功を奏していると見える局面も多々あるが、結果として後世に対して大きな負の遺産を残してしまっている。 ブッシュは、無教養(さほどではない、とは思うが)から近視眼的に行動し、自らのポスチャーとして足りない威厳を軍事力によって補おうとしている。 彼は、未だに危険な存在だ。 そして、彼は大統領になることにより学ぶことの少ない政治家である。
アメリカは偉大な大統領にしばらく恵まれていない。 ニクソンのような政治巧者はいたが、偉大な大統領とはアメリカ国民は認めないであろう。 アメリカ政治家のモラルとプロ意識は日本のそれよりはかなり高い。 しかし、あの国はリーダーに恵まれない国なのだ。 残念なことだが。 そして、だからこそ大統領自身が先鋭化したり、好戦的に振舞うことが多いのではないか、と私は思う。 少なくともブッシュの好戦的な側面は、彼の自分自身のリーダーという資質に対する懐疑の念に帰するだろう。