自衛隊派遣と愛国心

夜にこういう特集があった。 私も色々想う。
断っておくが、私は愛国者ではない。 自衛隊派遣には賛成だ。 ただ、それは私が愛国者だからでは決して無い。
私が自衛隊派遣に賛成なのは、国家として他国家に対する責任を取るべきだ、という点に尽きる。 まず前提条件はこうだ。

  • アメリカがいなくなろうが、自衛隊が無くなろうが、北朝鮮が滅亡しようが、世界中で戦争は無くならないであろう。
  • 戦後50年、国際社会に対して日本は軍事力ではなく金銭及び他国に対する技術・資本支援という形で貢献してきた。
  • 現在の資本主義体制は、世界各国の多大な貢献の元維持されてきた。 これは資本であり軍事であり、どちらかだけを取って論ずることはできない。
  • 軍隊であれ自衛手段であれ、自衛隊とはこの国における軍事力だ。 そして我々は多大な資本を投じてこの軍事力を維持している。
  • 良いことであれ悪いことであれ、憲法を変えることは可能だ。

世界平和を信じているだろうか。 私は信じていない。 国防とは、各国が主体性を持って自ら行うべきものであって、世界全体を通して維持しなければいけないという理屈は無い。(そうあって欲しいとは思っているが。) しかし、私は世界秩序は信じている。 別にこうあるべきだとか、そういった理想や理念ではなく、資本主義社会においてこれは何よりも増して維持しようと努力すべきものだと思っている。 いや、維持された方が良いものだと思っている。 そして戦後50年、世界秩序はある一定のレベルで言えば維持されてきたと言える。 この50年間、冷戦、政治学的に言えば『長き平和』のこの時期に、日本は世界秩序の維持から多大な恩恵を受けてきた。 今我々が享受している豊かさは、我々日本という国が独自に成し得た成果ではない。 アメリカ、日本をはじめとする多国の不断の努力があってこそ成し得たものだ。 これを反論することはできない。 もはや国家は、一国では自らを養っていくことはできないのだ。 どんな国であれ、多国との協和により成り立っている。 これをグローバリズムと呼ぶ。
その世界秩序の維持の為に、ある国は軍隊を送り、ある国はお金を送り、ある国は両方を送ってきた。 私はこれを不公平だと思っている。 例えばオランダという国を取ってみよう。 大きな国ではない。 しかし彼らは自らの国民を他人の戦争に送り、そして資金的にも貢献してきた。 これが、正しい意味での貢献では無いだろうか? つまり、軍事力も資本力も、各国の軍事力、資本力に応じて貢献すべきではにかと思っている。 ある国は軍隊を送り、日本は他より余分にお金を送る。 それで公平ではないかというのは、それは日本の理屈だ。 これは日本だけの話ではない。 誰だって、自国防衛でもない戦争の為に、自分の国の兵士を送り出したいとは思っていない。 しかし、世界秩序の為にそうしているのだ。 そんな国の中、日本はこれまで憲法を建前に軍事力での貢献を拒否してきた。 我々は、もう憲法という建前だけでは多国を納得させることのできない程の経済的恩恵を受け、資本力をつけた。 別にGHQが書いた憲法だから変えるべきとも思わない。 上手くいっているのなら、別に変える必要は無いでないか。 そうではない。 変える理由があるから変えるべきではないか、ということだ。 これは私の個人的な見解だ。
簡単に言おう。 日本はこれまで戦争に参加してきた。 日本が兵隊を送らなかったからといって、戦争に参加していない訳ではない。 もし金銭的貢献で良いというのなら、日本がこれまで対等に貢献し、戦争に参加してきたことを立証するものではないか。 そして、我々が好もうが好むまいが、我々はそれらの戦争により恩恵を受けてきているのだ。 今更『兵隊を送っていないのだから、日本は戦争に加担していない』などと言うのは他国に対して非常に失礼な態度だと私は思う。
私の言うことが正しいとしよう。 多くの国の軍事的・資本的貢献によって我々とそして他国の資本主義体制は成り立っていると。 そうした場合、あなたは『私の国民は死ぬのは困るから、あなたの国の兵隊を送ってくれ。 私達はその分お金を払うから。』という姿勢がほんとに正しい姿勢と思われるのか? 『あなたがたは自分の国の人間さえ死ななければ、他国はどうでもいいのか?』と問われたときに、あなたはどう答えるのか? 私の前提自体が間違っていると言うのなら、その論証を見せて欲しい。 少なくとも私の手元には、私をこの前提は正しいと信じさせるに足りる証拠があり、この前提を得る為に私自身もそれなりの研究はしてきたつもりだ。
最後につまらん反論を避ける為に念を押しておくが、今回のアメリカ・イギリスのやり方は、怖い人方の言うところの『いちゃもんをつける』に他ならないと思う。 化学兵器の存在自体に信憑性が無いのに行ったのだから、イラクへの宣戦は平和維持ではなく内政干渉だ。 そして小ブッシュ大ブッシュが言った『世界秩序』はただの詭弁だ。 アメリカがどれだけ貢献してきたと自分で思っているか知らないが、一国が自らその主導を主張するのは思い上がり甚だしい。 ただ、既に我が家は荒らされたのだ。 一家の誰が家を荒らしたにせよ、片付けなければならない。 荒らされたときに私は二階にいたから知らないという理屈は、残念ながら通らないのではないか。