真の政治巧者とは?

最近トニー・ブレアをニュースで見かけない。 当然だ、彼にとって今は嵐が過ぎ去るのを待つ時期。 こういった時につまらない事で話題に上がらないのが、トニー・ブレアの政治巧者たる所以である。
20世紀最高の政治家は?という問いに対する答えはなかなか出しづらい。 しかし最高の政治巧者は?と問われると私はトニー・ブレアと答える。 イギリスという国は、耐え忍ぶ必要がある時には『鉄の保守主義者』サッチャーが首相を務め、EUとの新しい門出には『政治界ヴォルク・ハン ※注1』トニー・ブレアを持つ、適材適所のリーダー運に恵まれている。
彼は、自分をマーケティングする術を熟知している。 パブリックアピールの内容とそのタイミングが抜群に上手い。 もちろん、人気取りの名人=政治巧者ではない。 しかし、二大政党制の民主主義国家において、支持率は自らの行動の自由度、そして自らの議会内での地位の確立において絶対的な要素と言える。 そしてブレアは、自分の支持率の使い方も巧みだ。 彼の首相としての経歴を見ると、彼の支持率と政治的行動の関係が極めて理に適っているのが解る。 彼は準備に余念が無い。 チェーザレ・ボルジアだけがマキャヴェリアンのあるべき姿ではない。 現代のマキャヴェリアンのあるべき姿は、まさしくトニー・ブレアのそれだ。(誉めすぎか?)
彼は状況の把握に長け、新しい変化への順応力も抜群だ。 イギリスの基本外政方針は過去300年変わっていない:『大陸(ヨーロッパ)勢力を分断し、一勢力が強大になり過ぎないよう務める』である。 イギリスのEUへの移行は、この理由もあり容易なことではない。 しかし彼はこの難解な移行をスムーズに行っている。 いや、スムーズと気付かないくらいスムーズに行っている。 それどころか、フランスとドイツの協調路線を早くから捉え、そこに参画したいという動きまで見せている。 今私が最も楽しみにしているのが、この『トニーのフランス・ドイツ仲良しグループに加わろう大作戦』である。 彼の任期終了までまだ時間はある。 彼の頭の中にはどんな未来図が描かれているのだろうか。
今度のイラク戦争に対して、早急にアメリカとの共同路線を明確にし、自主的に参入していった態度は流石と言える。 彼にとって、この一手は支持率が多少下がろうが打ちたい布石だ、と言うよりこういうケースの為に支持率を温存しておいたのだ。 迷いはあっただろうが、自らの強い意思を誇示した姿勢は流石だと思う。 しかし、彼の誤算は何だったのだろうか? それは、アメリカの力を過信していた、言い換えればブッシュ内閣がもう少し利口に振舞うと思っていたのではないだろうか?
いずれにせよ彼は大きなミスを犯した。 ミスは挽回しなければいけない。 彼は静かだが、静かな戦いの真っ最中である。 今後の彼の動きが楽しみだ。 彼の柔らかい物腰に騙されてはいけない。 彼は、近年稀に見る政治巧者なのだ。 そして、まだ彼の勝負は終わっていない。

※1 RINGSに参戦していた、コマンドサンボの達人。 流れるような連続関節技でファンを魅了。 知らんか。
ちなみにクリントンは『政治界トッティ』というのがぴったりだろう。
麻生太郎は『政治界出川哲郎』かな?
石破茂は『政治界保毛尾田保毛男』(そのまま過ぎ?)